イランで出会った男と詩

S, Esfahan and Pejman Bakhtiari

薄明かりの中でひらひらと手を振っている。眼鏡を外すとこんな顔なのかと思った。栗毛色の髪と髭、色白の肌。周りには他にも人がいたのに、彼の顔だけがこの世のものじゃないように美しく目に映った。 テヘランからエスファハーンに遊びにきたのは、友人の紹…

F, Khoy and Rumi

転がり回るように旅をしていた。出会う人たちに時に助けられ時に苦しめられながら。そんな中、見知らぬ異邦人を拾ってくれる人もいた。Fは私を拾ってくれた一人だった。 ひとり旅に出る数ヶ月前のこと、友人から借りた『アララトの聖母』という映画を見た。…

A, Tehran and his poet uncle

その年は一人でイランに滞在していた。カスピ海沿岸の町に住むホストマザーと友人を訪ねた後は数年ぶりに国内線を利用してテヘランへ移動してきた。機上から見る夜のテヘランは緑の電飾で溢れ、文字通り宝石のように輝いていた。タクシーに乗り込み空港から…

M, Orumieh and Hafez

車がゆっくりと進む。カーブした道に沿って林檎畑が目に入る。木には葉も実も付いていないが、全体がどことなく赤のような紫のような色に染まって見える。この色は実の色ゆえなのだろうか、そもそも日本で林檎の木を見たことがあっただろうかと考えているう…