Azar 1399

 イラン暦1399年アーザル月9日

 みなさん(誰が読んでくれているのか?)お元気ですか。11月を振り返ります。

 

食べたもの

・ブカ・マッシモのランチ

f:id:meigu:20201121225807j:plain

 夫の誕生日祝いで何度か来たことがあったのだけど、この日は念願叶って初ランチへ。前菜盛り合わせがどれもおいしく、少しずつ色々食べられる贅沢を噛みしめた。もちろんパスタも最高。お店を出た後は川沿いを散歩して良い気分転換に。

 

・イランのおばあちゃんのレシピ

 滞在中の日記を読み返していたら、イランのホストマザーに習ったケーキのレシピが出てきたので作ってみた。「たまご1個のケーキ」とおばあちゃんは呼んでいた。

f:id:meigu:20201126100110j:plain

 ところでイランのバーザールに行くと野菜やハーブもさることながらドライフルーツやナッツも豊富に売っている。もちろん量り売り。レーズンもたくさん種類があって(富澤商店並み)、お菓子用レーズン、料理用レーズンなど用途が書かれている。レーズンを混ぜる米料理もあるんですよ。なかなかどうしておいしいんだから。

 

 連休中にイラン料理も作った。イラン料理の中では比較的材料も揃えやすくて作りやすいルビヤポロウ(インゲンの混ぜごはん)。何度か作っているけど成功したり失敗したりで5勝5敗といった感じ。この日は勝利。

f:id:meigu:20201124130819j:plain

 

・白無花果と研究会

f:id:meigu:20201121230315j:plain

 銀座の無印良品で白無花果が売られているのを見つけた。ちょうどその後にイラン関係のオンライン研究会があって、その懇親会でイランでは食べられるけど日本じゃ黒無花果か乾燥したものばかりでなかなか見つからないですよねという話になり、無花果ひとつで結構盛り上がったので良かった。恩師にも(オンラインだけど)会えたし、大御所から初めましての方まで色んな話が聞けて興味深かった。

 

・アーツ&サイエンス×坂田焼菓子店のクッキー缶

f:id:meigu:20201121230519j:plain

 どの種類もおいしく二人であっという間に完食。私は缶が好き。このネタで偏愛ブログ書けると思う。

 

・アヴランシュ・ゲネーのガトー

f:id:meigu:20201121231635j:plain

 本郷に用事があったので帰りに歩いて春日のアヴランシュ・ゲネーへ。リュバーブのタルト。雪の塊のようなメレンゲにはヘーゼルナッツが入っていて食べ飽きなかった。

 

買ったもの

・ピンクの大きなブランケット

f:id:meigu:20201121230824j:plain

 なんかちょっとacneのマフラーっぽい。ベルベットのクッションカバーはフランスのDémodéのもの。色の種類が多くてきれいなんだよね。ピンク、グリーン、パープルを買って並べ替えたりしている。

 

・ミントの香りのフレグランス

 適当なニットに適当な寝間着を買ったくらいな今月の買い物。でもすごく好みど真ん中の香水を見つけた。DEDCOOLのROCCO。

f:id:meigu:20201123095919j:plain

 私にとってはイランを思い出させる香り。初めてイランに滞在した時に泊まったゲストハウスの匂いかもしれないし、庭園の植物の香りやどぎつい色をした洗剤の匂いかもしれない、バーザールのパフューマリーの、あるいは街中の人たちが付ける香水が混ざった匂いかもしれない。 とにかく、ミントとパインにジャスミンの混ざった香りに記憶が刺激される。

 

観たもの/読んだもの/聴いたもの

・ミハイル・タルコフスキーアンドレイ・ルブリョフ』

 「ソビエト時代のタルコフスキー」と題して特集上映されているのを知り渋谷のアップリンクへ。どれを観るか迷ったのだけど、以前から正教会のイコンに興味があったのでイコン画家の生涯を描いた『アンドレイ・ルブリョフ』を観た。画家の生涯だけじゃなく幅広いテーマを含んでいて抒情的な映像と合わせて鑑賞後は頭が重くすっかり疲れてしまった。ソ連時代のグルジア映画は好きでいくつか観たことがあったけど、ソ連映画と括っても監督によって色々だよなと改めて実感して面白かった。そういえば『ロシア・ソビエト映画史』という本を買ったきり読んでなかったな…。

 

・サーデグ・ヘダーヤト『盲目の梟』

f:id:meigu:20201125145820j:plain

 流通がほぼなくなっている中村公則訳版を幸運にも見つけた。高かったけれどこれは価値がある本。メルカリにも一度出品されていたのに買い損ねてしまったから飛び跳ねるほどうれしい。学生の頃大学図書館で借りたものは本当にズタボロだった。「人生には徐々に孤独な魂をむしばんでいく潰瘍のような古傷がある」の書き出しで始まる表題作は一度読んだら忘れられない。うれしさのあまりこの暗澹とした冒頭部を夫に読み聞かせるなどした。

 

・Gohar Homayounpour "Doing Psychoanalysis in Tehran"

f:id:meigu:20201125090737j:plain

 これも以前読んだ本。最近またパラパラと読み返している。ここで示されるのはどの国でも変わらないような精神分析家とクライアントのセッションの様子である。西洋人がたびたび抱くような「イラン人は主に性的・政治的問題を抱えているのではないか」「クライアントには囚人も含まれるのか」「体制側が介入することはあるのか」といった期待は裏切られる。と、前書きでは書かれているが、イランのことをなまじ勉強した身としては面白い話題もあった。例えばフェルドゥスィー『王書』に出てくるロスタムとソフラーブのエピソードはある種のエディプスコンプレックスである、とか。テヘランとパリを行き来する女性画家というクライアントもイランぽいなと思った。何度も読み直す本になると思う。

 著者のゴーハル・ホマーユーンプールはパリ生まれでカナダとアメリカで学を修めたらしい。本国フランスのフィガロでも取り上げられていた。*1

 

・شعر‌های فروغ فرخزاد

f:id:meigu:20201126095925j:plain

 フォルーグ・ファッロフザードが自身の詩を朗読したテープを聴いていた。院生時代にある先生から譲ってもらったもの。CDも持っているのだけどCDとカセットテープでは構成や収録されている詩が少し違う。古いテープだからノイズも入っているし紙を捲る音や背後の雑談まで入ってしまっている。それがなんだか良い。詩が朗唱される映画を観ているような。私は落語は聞かないけれど、歌声ではない人の声だけに耳を傾けるというのも良いですね。

 話は変わるがイランでは西暦とは違うイラン暦が使われている。だけど、イラン革命前のモハンマドレザー・パフラヴィー王権下ではシャーハンシャーヒー暦という別の暦が使われていた。大学で勉強しているとき、文献を収集しているとたまに発行年がシャーハンシャーヒー暦になっている資料に出くわした。結構混乱するのである。このテープもシャーハンシャーヒー暦2536年と記載があった。つまり革命前の一本。革命をくぐり抜けて今私の手元にある。不思議な気分。

 

 またしばらく外出を控えることになりそう。家でイラン版チェスもしたいし未読の本も未鑑賞のDVDもたくさんある。家で過ごすのも楽しいんだけどね。せめておいしいものは食べていたい。好きなレストランの予約も取ってある。引っ越して二年、やっと浴室を交換する話も進んでいる。ベッドサイド用に欲しいライトがある。本を読みながら眠りにつくとよく眠れる。慌てるように夜を味わう。来月は冬至だから赤いものを寄せ集めて長い夜を祝いたい。

 

    چگونه می‌توانستم
        تو را فاش کنم
     که حتا برهنگی‌ات را
     از تن درآورده بودی؟
  بیژن الهی

如何にして君を
暴くことなどできたであろうか
君は裸でさえも
その身体から剥ぎ取ってしまっていたというのに
   ビージャン・エラヒー