Tir 1400

 イラン暦1400年ティール月11日

なんだかブログに占める食べ物の話題の割合が増えている。最近はあまり買い物もしていないし、遠出も出来ていないので自然とこうなる。相変わらずぐるぐると色んなことを悩んだり考えたりしているけれど、なかなか文章にまとめるのは難しい。翻ってふだんの食体験は日々の思い出とともにある。写真と少しの文章でその日の記憶がすっとよみがえるような気がする。みなさんの日々はどうですか。

 

梅雨の祝祭

夫とは誕生日がちょうど2ヶ月ちがいで、付き合う前のこそばゆい間柄の時に誕生日のことばかり話した気がする。こんな状況じゃなければどこか遠くへ連れて行きたかったけれど今年も叶わず。わたしたちの間での暗黙の誕生日ルールに当日のプランを事前に相手に告げないこと、というものがある。サプライズが苦手な人もけっこういると思うけど(私もそう)、相手のチョイスに信頼を置けるのであれば身を委ねるのもいいものです。もちろん派手な演出はしない。ふだんのわたしたち通りにただ知らない場所に行くというだけ。

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ケーキだけは毎年決まったものを一緒に食べている。夫の大好物のメロンのショートケーキ。

 

食べたもの

・ヨヨナムのたっぷり野菜のカリカリ和え麺

夏になると食べたくなるやつ。決まって渋谷とか表参道から歩いていこうとするんだけど、代々木公園を越えて行くのが億劫で…。渋谷キャストのÅreでも食べられると知って行ってきた。夏の味だ。ヨヨナムはお店自体の雰囲気も素敵だけど、広々としてるしそこまで混んでなかったのでこちらもおすすめしたい。

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・クンバ ドゥ ファラフェルのファラフェルサンドハーフ

ヨヨナムの和え麺しかりファラーフェル(ペルシア語的にファラーフェルって言ってる)しかり、一人で出かける日は夫が苦手なハーブとかスパイスが入った料理を選びがち。初めて行ったけど評判通りめちゃくちゃおいしかった。野菜がたっぷり。ちなみにイランのファラーフェルサンドはふにゃふにゃのパンに柔らかめのファラーフェルとピクルスとソースを挟んだだけのものが多い。旅行中外食に困るとよく食べていた。

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・北出TACOSのタコス

そう、COMMISSARYのね。夫はピザを食べ、帰りにはドーナツも買って満喫したよ。電車に乗る前に日本橋から水天宮の辺りまで散歩した。このあたりの雰囲気が大好きで、近くに住んでいた頃は自転車でもよく遊びに来た。帰る道すがら、話題のお店へ行くよりはこうやって何もなくてもお気に入りのエリアを散歩する方が好きかもと話すと、そうだと思ってた、と夫からは返ってきた。

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・菓子工房シュクレのレーズンバタークッキー

レーズンサンドが大好物。マルセイに小川軒、NO RAISIN SANDWICHも一度だけ買えたことがある。これは福島屋で見つけたレーズンサンド。小さめで味も軽めでおいしかった。福島屋、良いです。ビオセボンも紀ノ国屋も北野エースも好きだけど最近熱いのは福島屋。堅めクッキーが好きなら福島屋の自家製クッキーがおすすめ。

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・鈴懸の若あゆ

子供の頃、通っていた学童保育でお茶会が催されることがあって、お菓子が若あゆだととてもうれしかった。大人になってから季節限定だということを知り(というか和菓子全般が季節によって販売される種類が変わると知らなかった)、初夏になると和菓子屋の前を通るたびに目を皿にして探すことにしている。夫が歯医者へ行った日、鈴懸の若あゆとホレンディッシェのバウムクーヘンを手に帰ってきた。なんと幸せな光景だろうと思った。大きなプレゼントより小さな手土産がたまにやってくるのがうれしい。

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買ったもの

・hinceのアイブロウアイテム

顔に色のあるものが付くのが苦手でお化粧はほとんどしない。ラロッシュポゼのトーンアップ下地に、色味のないラメが入っただけのアイシャドウベース、眉毛はちょっと描き足して透明の眉マスカラで毛を逆立てる、以上。きちんとしたいなという時にだけコンシーラーやフェイスパウダーを使うこともある。こんな有様だけど、元々眉毛が薄くまばらなので、アイブロウアイテムだけはなんとなくこだわっている。話題になってからかなり遅れてhinceを買ってみた。色付きの眉マスカラ、必要以上に色がつかないか心配だったけどとてもナチュラルでいいですね。ペンシルも描きやすい形状。しばらく使ってみようっと。

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読んだもの/観たもの/聴いたもの

・アーザル・ナフィースィー『テヘランでロリータを読む』

小説を、文学を、何のために読むのだろうか?どこで誰に読まれているのだろうか?ただの個人の追想録に留まらず、文学批評やイスラーム革命期以降のイランの社会史までを含んで語られる記憶。イスラーム体制下での生活の特殊さや困難さ、女性としての生き辛さについて学生と議論する日々。すっかりと魅了されてしまった。「芸術と文学が私たちの生活になくてはならないものとなった理由のひとつはここにある。芸術と文学は贅沢品ではなく必要不可欠なものだった。」

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Helios "Eingya"

フォローしているレコードショップのツイートから飛んで聴いてみたら良かった。なんだかすっきりしない梅雨空に合うのではないでしょうか。イメージで趣味をやりがちなので、夜に合うとか夏に合うとか、何色のイメージとかで音楽を記憶する。複数の名義でテイストを変えて音楽をやっているアーティストらしい。始めて聴いたこれがちょうど好きな感じだった。

youtu.be

 

・来月読みたいもの/観たいもの

去年出版された本で読みたいものが二冊あって、でもこれ以上積読を増やすのはなぁと思って買うタイミングをずっと延ばしていた。とりあえず『テヘランでロリータを読む』を読み終えてからと決めていたので先週やっと本屋へ買いに出かけた。7月はこの二冊を読もうと思っている。

あとは録りためたNHKシルクロードシリーズがあるのでこれも少しずつ観ていこうかな。自宅で集中して映像を観るのってなんだか難しいよね。映画館は入ってしまえば半ば強制的に集中せざるを得ないけれど。知らないうちに夫が「イラン」というキーワードで色々録画をしてくれているようでありがたい。

 

 

 

月末に微妙に体調を崩してしまってペルシア語の授業もスキップさせてもらった。毎月短編小説を読んでいるので、来月はそちらについても書いてみたいなと思う。お金を払ってスケジュールも決めて予習も必要だから、学生の時のように自分を追い込める。苦しい時もなくはないけど小説を一編読めたという達成感もあるし何よりペルシア語をきちんと読む時間を作れるのは良い。大人になってからこういった習い事みたいなものをするのは初めてかもしれないな、そういえば。

 

先日、イランにいる友人一家に電話をかけた。前回電話したのはあちらの情勢が怪しくなった時で、その前は大きな地震があった時だったかな、不義理をしてあまり連絡を取れないでいたのに名乗らなくても声でわたしだと分かってくれた。五人家族はみんな同じ訛りを持っていて優しい話し方をする。一人ずつ代わるがわる出て、タアロフ抜きの「会いたいね」を伝えてくれた。正直に言うとイランでそんなに友人がたくさんできたわけではなかった。友人の中でも会えないまま別れた人、拗れた関係もあった。イランのことが好きだ好きだと言うけれど、「イラン人だから」という理由で誰かと知り合いになろうと思ったことは一度もない。十年経っても続けられる数少ない関係は、一人一人あなただからなんだよと心の中で思う。

 

このツイートに友人が「イランでも同じことを思う」とリプライをくれたけど、まさにわたしが考えていたのはイランのことだった。国会議事堂の前の道をカーブして首都高に沿って走っているとき、もしかするとテヘランにいるんじゃないかという心地がした。

 

 

やっぱりこうやってペルシア語やイランのこと、出会った人、話した人のこと、文学、芸術、文化のこと、街の景色、昔の記憶についてえんえんと考えている。物質として目の前に現れなくても手で触れられなくても(それに対する物悲しさはある)、思考はわたしの楽しみで誰にも奪われない。そんなことを考えながらまた半身浴へ布団へ夢へ空想の世界へ埋もれていくのでした。

 

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みなさまご自愛を。チャオ。