Aban 1400

 イラン暦1400年アーバーン月11日

公園でのんびりしようと計画する日に限って雨が降った十月。仕事や生活についてぐちゃぐちゃに悩んだ月。それを吹き飛ばすような心地よい空模様に風が吹いて秋を感じられた月でもありました。

 

 

東京でいちばん好きな店 ふたたび

以前ブログに載せた月光茶房が不定期で営業されていると知りすぐに訪ねた。その日は雨で、David Sylvianが詩を朗読するレコードがかかっていた。それだけで強く印象に残るのはこのお店の佇まいがあってこそ。少しでも長く通えますように。

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読んだもの/観たもの/聴いたもの

・真崎嶺『サラリーマンはなぜサーフボードを抱えるのか?』

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日本のデザイン業界における白人至上主義の歴史と背景についてケーススタディを交えながら考察した本。彼はデザインに関するケースを取り上げていたけれど、他の課題にも使えるような、当たり前だと思いがちで案外行動に移すのが難しい流れを、丁寧に真っ直ぐに教えてくれる内容だった。自分が関わる物事の背景を知り理解すること、その物事が不公平なシステムに加担していないか注意深く観察すること、誤った行動を取った人を排除するのではなく議論に巻き込むこと、小さな場から議論を始め、システムを変える大きなムーブメントに繋げること。

この本のことは、POPEYEのウェブコラムで確か編集に関わる方が紹介していて知ったのだけど、POPEYE自身もいくつかの面でこの本で取り上げられた問題を孕んでいないとは言えないとわたしは思っていて、だからこそ、この媒体の中に意識を変えようとする人がいることに少し救われるような思いがした。

 

 

The Calvert Journalのオンライン映画祭でタジキスタンアルメニアに関わる映画を観た。このオンラインジャーナルは、東欧・ロシア・バルカン・中央アジアの若いクリエイティブな才能を支援する非営利団体が立ち上げたもので、少し前からTwitterでフォローしいくつも面白い記事を読んでいた。

開催された映画祭は1本£2でオンライン上で観られる形式で、特に興味をひかれた2本を観ることにした。

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・Anisa Sabiri  "Rhythms of Lost Time"

タジキスタンの民族あるいは宗教音楽を取り上げたドキュメンタリー。現地の人が語る、伝統文化や慣習を保存するのには、知識がなければならない、それが叶わないから失われたものもあるのだ、という言葉にどきっとした。

われわれ先進国に暮らす人間は、彼らのプリミティブな生活を羨ましく思って眺めることもままあると思うけれど、彼らにとっての理想は忙しくても発展した社会で暮らすことかもしれないし、断定的にどちらが幸せかと語れるものじゃないよなと考えたりした。

 

Garo Berberian "Taniel"

アルメニア人大虐殺の中で囚われ殺害された詩人のタニエル・ヴァロウジヤンの物語を、白黒の映像とナレーション、彼の作品の朗読で伝える映画。作中流れるピアノの旋律がこの映像をより強く美しいものにしていた。(ピアノの演奏が彼かは分からないけれど)エンドロールでは、サウンドトラックの担当としてティグラン・ハマシヤンの名も挙がっていた。

ジェノサイドのことに触れるたび、平板な言い方だけれどとても重たい気持ちになってしまう。それは単に同情だとか共感だとかから生まれる感情ではなくて、この出来事を本当に理解するにはあまりにも多くの知識が必要だと思うからで。うまく言えないのだけど。

 

映画祭では他にも学生作品や実験的作品も参加していたので、来年も開催されるのであればもっと観てみたいなと思った。

 

 

・GREEN-HOUSE "SIX SONGS FOR INVISIBLE GARDEN"

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これは誕生日に夫から贈られたカセットテープ。目を閉じて空想の庭園を思い浮かべながら聴いていた。

 

・Rhodri Davies, David Sylvian, Mark Wastell "There Is No Love"

youtu.be

前述の月光茶房で聴いたもの。雨の日、日が翳って暗い天気や時間、狭い部屋、そんな条件で聴いてみてほしい。

 

 

食べたもの

・Buik グラノーラ

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こだわり系のグラノーラは毎日の朝食にするにはお高いのでたまに買う贅沢。

 

・Acquolina ジェラート

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十月の初めはまだ寒くなくて、半袖でジェラートを食べられるくらいだった。

 

・Charcuterie à Tokyo 生ハムサンドウィッチ

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シンプルな食事を静かな場所で取りたいときに来るお店。

ひとつはチーズで、もうひとつはバター、いわゆるジャンボンブール(ペルシア語でもハムはジャンボンなのですよ)。たっぷりのグリーンサラダと紫キャベツのマリネ(ブラウンマスタードとレーズンが入っていてラブだった)とキャロットラペも丁寧に盛り付けてくれるのがうれしい。合わせたジュースは家でもよく飲むアラン・ミリアのカベルネ

シャルキュトリは通販もできるのでおすすめです。

charcuterie.theshop.jp

 

・AM STRAM GRAM 無花果のタルトとシャインマスカットのタルト

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はじめて行ったお店。今年はまだあんまり無花果を食べられていなくて、だからより一層美味しく感じた。生地にも無花果のペーストが層になって入っているのが良かった。あと、無花果と胡桃の組み合わせは最高ですよね。

 

・kenka スモークドナッツ

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breadworksの近くに来ると買う。わたしはお酒を飲まないけれど、たぶんお酒に合う味なのだと思う。

 

・栗ごはん

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いつものお米屋さんで栗をもらったので、生まれて初めて作った。栗ごはんの経験がなくて正解が分からなかったのだけどそれなりにおいしかったのではと思う。夫は栗が大の苦手なので、これは自分用のごはん。ここぞとばかりに野菜を食べる。

 

 

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選挙の話を少しだけ。Twitterでいくつか見かけた意見で気になったものがあった。SNSでは以前に比べ周囲の意識が変わり選挙に参加する人も増えたような、そんな空気を感じていたのに、蓋を開けてみると戦後三番目の投票率の低さだった、という意見。または、自分がインターネット上で見慣れている世界と世論には大きな差があるという呟き。こういった意見を読みながら、オンラインでの一方通行な発信だけでなく、オフラインの世界でも真摯に議論ができる場や雰囲気があるといいなと切に願う。議論が紛糾するよりも辛いことは相手に引かれること、そういった心配があるから話せないことがたくさんあるように思う。あとは、わたし自身も含め、議論するために必要な知識に手を伸ばすには、あまりに生活が忙しいという人も多い気がする。こんな状況も改善していかなければいけないと改めて思った。

 


もう月は変わって十一月。今月は久しぶりに夫を連れて帰省します。海へ行って波の音を聞きながら大きく息を吸い、のんびりと過ごせますように。