Azar 1400

 イラン暦1400年アーザル月7日

この記事を書いている今、ティグラン・ハマシヤンの"An Ancient Obserber"を聴いています。窓から見える空は下の方がオレンジ色に変わってきていて、夫が言うところの「夕焼けゼリーの色」になっています。

 

心やすまる土地

感染者数が減って、今なら旅に出られるかもねということになり、色々案を出してみたものの、結局はおいしいものを食べて自然の中でのんびりしたいという希望が一致して他でもない地元に帰省することになった。

北陸新幹線が開通して以来、金沢市内はわたしから見るとオーバーツーリズムに近い状態になっていて、帰るたびに悲しい思いがする。小さくて個性的な商店はなくなってしまい、全国展開あるいは海外資本の大きなホテルやショッピングモールがどんどん増える。それにも増して心が痛むのは、明らかに観光客をターゲットにしたお店が増え続けていること。もはや日本だけでない異国の街だって、物理的にも知識的にも遠いものではなくなってしまった。こんな時代に旅に何を求めるのだろうかと考えながら雨の金沢をうろついていた。

 

地元への思いは書き出せばきりがないので写真と短めのコメントで。

 

着いて翌日に能登半島、今回は輪島へ。海沿いをドライブする気持ちよさ。でもね、反対側には色付く山があって芒原も田圃もある。そのどれもが目と心に安らぎをもたらしてくれる。沖には八つの島が見える。

f:id:meigu:20211128162138j:plain

 

帰路に寄った上時国家、閉館間際だったのでわたしたち以外に誰もおらず、静かで本当に良かった…。わたしたちが見学を終えて外へ出た途端、働いていらっしゃる方がさっと帰宅していく様子も良かった。そう、人は時間が来れば労働をやめて帰っていいんだよ。

f:id:meigu:20211128162547j:plain

 

地元の鮨ネタではキジハタと梅貝、この日はなかったけどガス海老がいっとう大好き。

f:id:meigu:20211128163131j:plain

 

さらに翌日は一日中雨。金沢はどこまでも歩いて行けそうな気がするほどに、緑が多くて川も流れる気持ちの良い街なのだけど、この日はさすがに風も強くて泣く泣くバスとタクシーで移動した。

 

帰省して見に行きたかった目的のひとつ、成巽閣の杮葺き。下半分が雨に濡れて、抽象画のような美しさだった。

f:id:meigu:20211128163429j:plain

 

お昼にせせらぎ通りのそばのフレンチ、Tawaraへ。地元の食材を使って、器も地元の焼き物のひとつ、珠洲焼を多く使っているみたいだった。こういうお店は良いよねぇ。特においしかった三皿を。

ブリの出世前、ガンドのカルパッチョ

f:id:meigu:20211128164141j:plain

ハッシュ・ド・加賀蓮根。

f:id:meigu:20211128164204j:plain

能登の栗を使ったモンブラン

f:id:meigu:20211128164223j:plain

 

はじめて吉はしの生菓子も買いに行って、家で両親とお茶を淹れて一緒に食べた。わたしは一人で三つも食べたんだけど、どれもおいしかったな。わらび餅の餅の部分がごく薄くてお上品だったし、色合いは同じ練り切りも白餡と黒餡で全然違うように感じた。

f:id:meigu:20211128164622j:plain

 

帰りの日は子供の頃から家族で通ううどん屋さんでいつもの鴨南蛮うどんを。義兄も夫も大好きだと言ってくれるお店。全然観光地ではないので、金沢在住の方がいたらこっそり教えます。

f:id:meigu:20211128165109j:plain

 

夫と二人の秘密の場所にしていたとある並木路を両親にも見せてあげた。冗談を言いながらも優しく穏やかに過ごせる両親と夫との関係を心から大事に思っている。

夫のリクエストで牧場でソフトクリームを食べて帰路へ。

f:id:meigu:20211128165128j:plain

 

昔の記憶を辿ると、地元には苦しい思い出ばかりあるけれど、わずかに残る、心が解き放たれるような感覚を今膨らまそうとしているように思う。あるいは錯覚かもしれないけれど、緑があって海のそばにある地元のことを崇敬するような気持ちがある。年末に帰る時には雪が降っているだろうか。

 

食べたもの

・Teishoku 美松

池袋の良心ことTeishoku 美松。今月は二回行った。一回は夫と、もう一回は仲良しの後輩と。そしてすぐまた行く予定。大通り沿いのお店から完全に移転したけど、お札や民芸品や本もそのまま一緒に引っ越していて、お店の雰囲気は変わっていない。メニューは種類がたくさんある上、量の調節も柔軟に対応してくれるのがうれしい。

f:id:meigu:20211128165848j:plain

 

・ピスタチオのケーキ

家へ招いた仲良しの後輩がお土産に持ってきてくれたビブロスのケーキ。わたしこういうの本当に本当に大好きです。ペルシア語でピスタチオこと、我が家の愛猫ペステさんは人見知りをしてほとんど出てきてくれなかった…。また遊びに来てもらおうね。

相変わらず口下手で、ぼんやりしてると思われていないだろうか。年上なのに情けないなぁと思いつつ、楽しいひとときでした。

f:id:meigu:20211128165932j:plain

 

読んだもの

・場所を巡る読書、三冊

地元の話もそうだけど、最近特に東京で暮らすことに息苦しさを感じていて、場所への情念や愛情について知識を増やしつつ考えを整理したいなと思い、図書館で借りた三冊。

f:id:meigu:20211128170640j:plain

読み切れたのは泉麻人の『東京23区』だけ。これは昔の話と分かっているから笑いながら読めるけど、著者自身も書いている通り「23区サベツ遊び」をやった本で。しかし、先入観に基づいたわけではなくて、ある程度はきちんと町のひとびとを観察した上で書かれているように思ったな。それも昔のことで、今はインターネットや交通網の発達で、街は極端な均質化を続けている。どちらが良いとか決めることは出来ないけど、なんだかそんなことを考えた。

アレックス・カー『美しき日本の残像』は読み始めたら思っていた内容と違い、途中で読むのをやめてしまった。ロジックなしで感覚として美を捉えてもいいのだという気にはさせられた。美しさと便利さのどちらを選択するのかと問われたら、わたしも個人的には美しさを選びそうだけど、不利益を被るかもしれない人のことを考えてしまう。ああ、どうしてわたしはこうも思い悩みがちなのだろうか。

イーフー・トゥアンの『トポフィリア』はまさに読みたかった内容なのだけれど、返却期限内に読み終えられなかった。それならば購入しようかと見てみると、すでに絶版になっていて入手困難。こんな良書こそ再版されるべきではないですか。

 

買ったもの

・今月のお買い物

Teklaのバスローブ。三年使ったバスローブが洗濯・乾燥で破れかぶれになってしまいましてね(しかも母からもらった化粧ブランドのノベルティだった)。これはわたしの体には結構大きいのだけど、お風呂上がりにふわふわに包み込まれるってこんな気持ち良いのだと当たり前のことを思った。

f:id:meigu:20211128171938j:plain

 

プロジェクターとスピーカー(と、台にしているUSM Hallerのキャビネット)。テレビを廃そう計画に夫がついに首を縦に振ってくれたので、その勢いのまま。テレビも見れるのだけど、リアルタイムだとラグで画面が固まってしまうことがあるので、基本的に録画して見ている。あと、YouTubeテヘランの街中を歩きながら撮っただけの動画が配信されていて、それを付けたままぼーっとすることをしたいなと思っている。

f:id:meigu:20211128172607j:plain

 

すっかりスマホ・PCに頼りっぱなしだけど、改めてジャーナリングって良いのではと夫と色違いで買ったRHODIA。荷物を減らしたくて手帳を持ち歩くのをやめたことを機に全然書かなくなったのだけど、これは日記代わりにしようと思っている。緑色なのかわいいよね。限定カラーみたいだけどこれから毎年緑色で出て欲しいとすら思う。

f:id:meigu:20211128172653j:plain

 

・お洋服と靴

夏の終わり頃からのお買い物をまとめて載せます。

 

透ける黒のシャツとカラーリングとポケットがかわいいカーディガン。

f:id:meigu:20211128173125j:plain

 

Zaraのビッグサイズなシャツ。とても気に入ってる。安くてもファストファッションでも気に入ったら年単位で着ます。

f:id:meigu:20211128173214j:plain

 

ベストを二色。ベージュの服って似合わない気がしてあまり持っていなかったんだけど、手持ちの服に結構合わせられて良い買い物したなぁと思う。

f:id:meigu:20211128173314j:plain

 

パンツ二色。ブラックの方は先シーズンので、迷っているうちに買いそびれたのを楽天で見つけたので即購入。グレーの方はハイウエストなワイドパンツでサラッとした生地、今の気分にぴったりでこれまた気に入ってる。

f:id:meigu:20211128173438j:plain

 

こんな靴ばかり好きです、な集合。右の二足が今年の購入品。奥のChurch'sのシャノンはずっと欲しくて、今年の賞与で買うと決めていたもの。ちなみに夫はAldenのシューズを買っていた(二人で買うものを揃えて選ぶの結構楽しかったです)。手前はHereuで、これも去年から欲しくて迷っているうちにサイズ切れしていたのを入荷待ちして買った。スニーカーは白色ばかり持っている。

f:id:meigu:20211128173617j:plain

 

服も靴も似たようなのばかりが好きだけど、自分はそれで満足している。たまに色物や柄物を着て気分転換することはあるけど。

 

 

 

f:id:meigu:20211128175610j:plain

 

 

まだまだ先が読めない日々が続きますね。来年はどんな一年を過ごすのだろうか。どこか遠くへ出かけられるだろうか。

わたしは寒い季節が大好きで、白い息、深い夜、止むことのない雪、風の音、そのどれもが自分の存在を軽くしてくれる気がする。来月は冬至だから、また赤いものを集めて、一年でいちばん長い夜を忘れられない夜にしたいと思う。