Bahman 1401

 イラン暦1401年バフマン月16日

 

サラーム、2023年。子供の頃は時間が経つのが遅く感じられて、自分のせっかちな部分はいつもそれに腹を立てていたように思う。早く時間が経ってどういった日がきてほしいと思っていたのかは、もう覚えていない。仕事をしていると、あっという間に一年が終わって、次の一年が始まっている、そんな感覚がある。時間が経つのが早く感じても遅く感じても、目の前にいる人を大切にすることさえ忘れなければ、それで良いのではないだろうか。

 

正月は地元で

今年も年末年始は地元に帰省して過ごした。今年は夫と同じタイミングで帰ったこともあり、年末恒例の単独海沿いウォークはしなかった。天気が良くなかったせいもある。車の中から眺めただけで、砂浜を踏むこともなかった。代わりに何日か続けて日帰り温泉に入りに行った。荒天の中で入る露天風呂は格別に気持ちが良いものだ。

 

到着した日には、その足で近江町市場へ向かい、お節や年末の料理の最後の買い出しをした。両親と四人で名鉄エムザの地下にある、ぼてぢゅうで念願の食事をした。地元を離れて以来、どうも県外で食べるぼてぢゅうがおいしく感じられない。それはなぜなのかと考え調べてみると、どうやら金沢のぼてぢゅうは全国にあるそれとは別物らしかった。みんなでカウンターに並んでアツアツの料理を食べるのは楽しい。金沢へ旅行へ行かれる方、もしもお寿司をはじめとする魚介やおでん、ファンシーなレストランに飽きるなどということがあったら、ぜひ行ってみてください。

 

今年は正月休みが短かったので、お節料理を作っていたらあっという間に休みが終わった。夫も参加して五郎島金時を濾してくれたのだが、三ヶ日が終わるまで「◯◯くんのきんとん」と呼ばれていたのがおかしかった。

 

元旦に祖父母宅で開かれる、親類の集まりはどうも得意ではない。集まりといってもごく小規模なのだが、毎年途中で気が滅入ってしまって一人で抜け出したりする。今年は辛くなったら夫を頼るぞと決めて、二人で家の中を探索したり、部屋の隅で話したりしていた。ただ、その一方で、毎年楽しみにしているのは姉が買ってくるこのプチケーキなのである。馴染みのケーキ屋さんのこの四角の小さなケーキが入れられた箱は、宝石箱のようだと思う。

別の日に、別のケーキも追加で買いに行く、食いしん坊な実家…

 

金澤神社では初詣も兼ねて厄払いをしてもらった。雪がひどく降る年は歩くだけで大変なのだけど、毎年この日に兼六園の中を歩くと、ありきたりな言い方だが心が洗われるような心地がする。深い緑に覆われた神聖なつめたい空気を吸って散歩をする、それだけのことがありがたく感じる。

 

食べたもの

・かわいいお土産

帰省中に、出かけた甥っ子がお土産に買ってきてくれたクッキー。デパートの地下にある、お菓子の計り売りの回転台で選んでくれたのだとか。

 

・厄払いの撤饌

破魔矢や干支の置物と一緒に入ってくる撤饌は、昆布や昆布茶、鰹節にこの最中と落雁も含まれる。牛なのは菅原道真公が祀られているから。どちらも諸江屋のもので、金沢の和菓子すごいなと感心した。

 

・尾山町 coya.のビスケット

いつも売り切れだったりしてなかなか買えないcoya.の焼き菓子。固くて素朴な味がするビスケットが大好き。

 

八ヶ岳食工房のプロシュートのパテ

新宿の伊勢丹で催事をしている時に買ったもの。今年の初夢にはこのパテ瓶が出てきた。想像以上においしくて気に入りました。ほかにソーセージやパンチェッタも通販してみたいなと思っている。

 

・目白Pastificio del Gattoのイタリアパン

クリスマスに買い物に行ったのが楽しくて、今度はパン目当てで訪ねた。この面白い形のパンはコッピア・フェラネーゼという、エミリア=ロマーニャ州の伝統的なパンだそう。力強い粉の味がしておいしかった。他にも田舎パンやチャバタも。

クリスマスの時とは別の猫(gatto)がいた

 

・目白AIGRE DOUCEのガトー

目白へ行ったのはエーグルドゥースのガトーを買うのも目的だった。やっぱり好きなお店だなぁ。わたしは大好物のタルトシトロンを選んだ。夫の誕生日をはじめて祝った年は、ここのシャンティフレーズを選んだ思い出がある。この日は、金沢で買った丸八製茶の季節のほうじ茶、香寿を一緒に。

 

・やさしいおうちごはん

わが家では、家事は得意な方が得意なことを、という感じで分担しており、料理に関してはなんとなくわたしが担当することが多い。なのだが、たまに夫が作ってくれると、人に作ってもらう家庭の味っておいしいしありがたいなと思う。今月はちらし寿司と豚汁、肉味噌きゃべつとわかめスープとトマトときゅうりを作ってくれた。おいしかったよ、ありがとう。

 

買ったもの

今年はなんとなく、買った服の数と手放した服の数を記録したいなと思っている。

 

・Edition×THE RERACSのオーバーオール

ラクスのボトムスはずっと気になっていた存在なのだけど、自分のサイズの展開がなくて諦めていた。そんなところにこのオーバーオールを見つけて、あまりサイズに関係なく着られるし、そもそも自分はオーバーオール、サロペットの類の服が好きなのもあって迷わず(試着はしたけど)購入した。さらっとした生地の手触りが良くて、ボタンや金具の細部まできれい。

 

・Acne Studiosのダブルブレストジャケット

同じ生地で作られたパンツを先に持っていて、セットアップで着たいなと思いジャケットも購入。いわゆる二次流通で。毎年定番で出ている型で、長く着られそうでうれしい。

 

今月手放したのは二着。どちらも幸いにも買い手がついた。一次流通で購入してそのブランドを応援すること、不要な服の廃棄を出さないこと、その両立を叶える手段について引き続き考えていきたい。

 

観たもの/読んだもの

ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展

夫が誘ってくれて、最終日に滑り込みで観に行った。この日観た作品だけで言えば、わたしはセザンヌマティスのものの方が好みだった。昔ポンピドゥーで観たピカソの自画像が好きだった記憶があるが、あれは本当にピカソだったのだろうか、記憶があやしい。白黒のスケッチ調だったように思う。夫の方はそれなりに楽しんでいたみたいで、トートバッグと図録を買っていた。夫が楽しそうだとそれだけでわたしもうれしい。それにしても、予約をしてもあんなに混雑するのはどうしてなのだろう。作品を味わう前に、人混みに疲れてしまって得られるものが半減している気がする。そこまでしないと収益が出ないシステムなのだろうか。

この日は特に寒さが厳しい日で、美術館へ向かう前に上野の藪そばへ立ち寄った。熱々の鴨南蛮そばがたいそう身体に沁みました。

 

・中東現代文学研究会編『ワタン / Homeland スタディーズ① 現代イラン文学におけるHome/Homeland』

知り合いの方がご厚意で送ってくださった。市販されないものなのでたいへんありがたい…。年末に届いた最高の贈り物になった。現代イランの文学の中で故郷や祖国をどう捉え描いているのか、両講義録ともとても勉強になる内容だった。なんと、取り上げた詩の原文と訳も付録されているので、少しずつ読んで咀嚼したい。

 

宮地尚子『傷を愛せるか』

たまたま雑貨書店で手に取った一冊。読み初めは妙に感化されて涙してしまった。最近は「繊細さん」なんていう言葉で切り捨てられたりするが、そもそも人は自分の傷にも他者の傷にも敏感だったはずではないだろうか。深く頷くような文章があるいっぽうで(あるいはだからこそ)、自分の考えとは相入れない著者の考え方が出てくると、どうも受け入れがたく感じてしまった。シンパシーを感じすぎると微妙なズレに余計に傷ついてしまう、そんな感じ。適切な距離感について忘れないでおこうね、と本の内容からはちょっと外れた部分で決意を新たにした。

 

 

月例の。

似ているようで異なるカップ

 

 

 

ぺっちゃんの寝正月。一枚目は帰省から戻った時のずぶずぶの甘えん坊写真。

 

 

残り短い冬を楽しみましょうね。ホダーネギャフダール。

 

 

去年の年始の記録はこちら。

meigukhnm.hatenablog.com