Mehr 1403

 イラン暦1403年メフル月30日

 

これは9月1日18:21の空。

電灯の灯りのほうへ伸びる枝葉

都心にもオナガがいるのですね

 

 

夏休み 長野は蓼科へ

イランも他の国への渡航も諦めざるを得なくなった今年、夏に納車したばかりの車でドライブ旅をしようということになった。最近、長野出身の友人の写真を見たり話を聞いたりしていて、ドライブにも程よい距離、海に行ってばかりの帰省とは対照的に山でのんびりしたく蓼科高原を旅先に決める。

道中、何度か通販をしたことがある都外の好きなパン屋を途中経路に入れてもらう。通販では買えないサンドイッチを店内で食べられて至福のひと時。ローストポークバルサミコごぼう、ハムとモッツァレラをそれぞれ別のパンで。夫が追加したクロックムッシュも正統派のおいしさ。そう、ここのお店のパンドミが食パンの中でいちばん好きなのだった。店主の方へも愛を伝えられたし、それに対していただけた言葉もすごく丁寧で実直でますます好きになった。車があれば比較的来やすい距離なので今後のドライブが捗りそう。

奥の撮影NGマークは「お手元のみOK、店内はご遠慮ください」のマークです、念のため

三泊したあいだ、いくつかの池や湖、高原湿原を訪ねた。特に良かったのは白駒池、蓼科大滝、七島八島(八島ヶ原湿原)。人が少なくて水や風、木の葉擦れの音を聴きながらぼんやりしたり、写真を撮りながら軽いハイキングをして過ごした。

お蕎麦が大好物です。石川のようにつゆが関東と比べて甘め。緑の蕎麦は新そばの十割。

投宿先は林の中にある別荘地のペンション。朝夕と付いてくる食事がかなりボリュームがあり、夫と二人で苦しい苦しいと言いながら眠りについていた。宿選び、イランでは割と寛容なのだけど日本ではいろんな面でシビアに見てしまう、その自身の不寛容さに自分でイラつくというよく分からない落ち込み方をしてしまった。


帰路に着く前に寄った産地直売所がとても楽しかった。ローカルな食べ物を見るのが好き。買い込んだお土産はもらった箱に詰めてそのまま車に。シャインマスカットやナガノパープルに比べて知名度は低いような気がする、クイーンルージュという品種のぶどうを自宅用に。甘さが強くて渋みのない味。


見ているだけで気分の上がる旅バッグはどちらもBODE。車にがさっと積んで出かけるという夢がやっと叶った。

山梨方面からの帰路、標高が高い場所を通っているときに雲海のようなものを見た。山がちな幹線道路は、イランのテヘランから北に伸びる、テヘラン-チャールースロードに似ているなと、ここでもイランへ思いを馳せていた。

 


夏休みの余り 好きな店再訪

海外へ出られなかった代わりに、自宅から遠くない範囲で好きな店を再訪することにした、贅沢でおなかが幸せな日々があった。

日本橋の日は好きなカフェでシナモントーストを食べ、お昼は久しぶりのちらし寿司、帰りに高島屋の地下でオーボン・ヴュータンのケーキを買う。高島屋新館のSOLSOが好きで近くに来るたびに立ち寄るものの、植物を買う勇気が出た試しがない。鮨屋で並んで待っているあいだ、夫と言葉遊びをしていた。

このときばかりは「宝石箱〜」となる(ならない?)

ピスタチオとラズベリーの小さなケーキ

渋谷〜代官山〜中目黒の日。ランチセットではなくアラカルトで選ぶのが楽しいヴィロン。と言いつつ、メインはステックフリットにしたが、ポテトがあまりにおいしくて、最初はきっと食べきれないよねと言っていたのに気づいたら完食していた。個人的に次なる東京スイーツブームとなるのではと思っているプロフィットロール。温かいチョコってどうしてこんなにおいしいのだろう。ヴィロンに来たらガトーショコラで揺るがない!と言っていた夫も、プロフィットロールを一口食べてあっさり心が揺らいでいた。

お茶の時間はずっと憧れがあった聴景居。わたしは釜炒り茶、夫は白茶を選ぶ。手元の器も空間も美しくて、上品な味わいのお茶を飲みながら本を読んだり静かにしゃべったりと贅沢な時間だった。のんびりと過ごせるのがありがたい一方、静謐な空間なので他のお客さんに恵まれないと辛いかもしれない(この日、大きめの声で話す方々と一緒になりそれだけが心残りだった)。代官山のコンランショップは以前来たときよりも、強く惹かれるものがたくさんあった。最近また器に興味があるので、そのせいかもしれない。

 

横浜の中華街も久しぶり。駐車場に着いた瞬間からイーアルカンフー的な音楽が頭の中で鳴り響く。お店に入って席に着くと銅鑼があり、勝手に気分が盛り上がる。中華街でいつも食べに来るのは萬珍樓。オーソドックスできちんとおいしい広東料理。食器や装飾も美しくて特別な気分に浸れる、夫や両親との思い出もあるお店。腹ごなしに山下公園へ行くも、風が強い日で小雨も降ってきてあまりのんびりできなかった。帰る前に元町の好きなカフェへ。レモンのタルトのキャラメリゼの部分の苦さとアイスクリームの甘さが良い組み合わせ。テーブルの上に三脚を置いて自分の顔を配信しながら友人らしき人と食事している高齢女性がいて、なぜわざわざここで…?と思った。自分はお店の雰囲気を壊さない客でありたい。帰りは帰宅ラッシュに巻き込まれたのか、雨の中の長時間ドライブになり日が暮れきってからの帰宅(運転してくれた夫に感謝)。高架の高速道路から見る都心のビルは、予想外に魅力的に見える。どこに続くのか分からない急な段差の階段、マンションから漏れる灯り、ああ、テヘランでもこんな風景があったなとわたしはまた思い出に浸る(また…)。

 


その他食べたもの

・STYLE'S CAKES & CO. 塩のケーキ

お誕生日だったからといただいたSTYLE'Sの塩味のケーキ。あまじょっぱい味好きにはたまらないケーキだった。一緒にもらった秋田土産のあげ干し餅もはじめて食べる食感と味で、最高のローカル菓子に出会えた。

 

・ピスタチオのパン

はじめて行った隣駅のパン屋で買ったピスタチオがごろごろ入ったパン。

 

ガスパチョ

日本橋高島屋の英国展にスコーンを買いに行った日、いつものカフェでガスパチョを食べた。炎天下の中歩いてきて食べるとありがたい味。しかし、催事って苦手だなと改めて思う。人が多い場所が苦手だし、コアなファン層の熱に気圧されてしまう。並んで買ったスコーンはどれもおいしかったけど、自分で焼いておいしいと思えればそれで十分かも、という気持ちになる。他人から見れば自分もミーハーな人間なのだろうなと思う一方で、ミーハーであることへの苦手意識もある。スコーンを食べながらこんな気持ちになりたいわけじゃないのに…。

 

・サラダボウルとベニエ

夜営業をやめると知り悲しんだ好きなカフェ。平日の夜にドライブがてら来たかったな。かたいお菓子が好きだけど、ドーナツに限ってはふわふわとしたものが好みかもしれない。そんなわけでベニエも大好き。

 

・ホットドッグ

上のカフェの系列のお店にも日を空けずに訪問。このパンがおいしいのに、作っているパン屋では買い物ができたことがない(一度行ったときには品切れで店じまいしていた)。

 

・目白 エーグルドゥース

近くを通ったので寄り道した好きなパティスリー。いつもは並ぶのに、この日は拍子抜けするほど空いていた。夏はお菓子屋さんは儲からない、というあれなのでしょうか。大事なお皿とティーカップでお茶をする。

 

ブルーボトルコーヒー トンカ豆のチーズケーキ

何気なく頼んだらとんでもなくおいしかったチーズケーキ。トンカビーンの強く芳香な香りそのものを食べているような。

 

・おうちでのおやつ

甘さがないレーズンパイは見た目も地味かわいい。

たまたま買えた亀十のどら焼き。夫が買ってくれた仙太郎の栗蒸し。

石川の好きな餅屋のかきもち。

近くへ行く用事があり買えた、曳舟 いりむらのお煎餅はあまりのおいしさ。

映えない…!

 

読んだもの/観たもの/聴いたもの

アントニオ・タブッキ『インド夜想曲

なんとなく後回しにして読んでいなかった作品。本屋で探していた本の在庫がなくて、それならと代わりに手に取った。西洋の人がときにインドに投げかけるオリエンタリズム的視線が昔から好まし思えなくて、でもこちらには不必要な過剰な描写などもなく、描かれている土地を想像しながら話に引き込まれてとても面白く読めた。タブッキが好きなのもあるだろうけど。そういえば、ウズベキスタンへの旅を書いた作品も好きだったな。

 

ジョージア映画祭

これのためにこの月はひたすら渋谷へ通い、文化村への坂道を登っていた。『ピロスマニ』の絵描きのままならない人生と、静かに物語る絵。『アラヴェルディの祭り』や『昼は夜より長い』の民族的伝統や風習、後者ではさらに女性が自分の手で選ぶ人生について。『祈り』の圧倒的な映像の美しさと神話的なストーリーは、二度目の鑑賞でも新鮮に感動する(テンギズ・アブラゼ監督の作品は三部作すべて観たことがあり、『懺悔』も二度観ている)。『ピロスマニのアラベスク』も二度目。『祈り』同様、人生で観られる機会があればそのたびに観に行くと思う、パラジャーノフにしか作れない世界観。『アラヴェルディの祭り』も白黒の映像が印象的で、急に詩的なシーンに切り替わったりするし、『昼は夜より長い』の旅芸人たちの狂言回しが挟まれる構成も面白かった。

上映前にヴィロンでサンドイッチを買ったりもした。夏限定のサンドイッチ・ド・エテもおいしかったけど、ジャンボンフロマージュがシンプルにいちばんおいしい。

 

・レコードとカセットテープ

渋谷 代官山 中目黒で遊んだ日に、今日は買い物するぞという意気込みで向かったWaltzでは収穫がたくさん。

Lost In Translation』と『CALL ME BY YOUR NAME』のサウンドトラックLP。それぞれ日が落ちてから、朝に、と聴くのが気分に合っている。

カセットでは、前々から好きでレコードやカセットを集めているCIGARETTES AFTER SEXの『X's』、お店による評を読んで気になったLUTARO『THE ACADEMY』を。

 

買ったもの

・Sea 刺繍がかわいいコート

暑がりのわたしには、東京で着るにはウールやカシミアのコートはあたたかすぎて、ここ何年か探していた薄手のコート。コレクションを見たときに一目惚れしたSeaのコート、実物を見て試着してこれだと確信。

袖にいるキーウィがかわいすぎる

 

・OUR LEGACY ベルト

こちらも去年くらいから気になっていたもの。さらさらとした金具の重みがあってぽてっとした質感が好き。気に入りすぎて色違いも欲しくなっている。

 

 

 

 

 

わたしは相変わらずめそめそしたり、心機一転!と意気込んだりと忙しない自分のお気持ちを乗りこなそうと必死ですが、みなさんはいかがお過ごしでしょうか。そろそろピクニックが気持ち良い季節が始まりそうな予感がしています。公園や植物園ですれ違うことがあれば、快い念を送りたいものです。