Dey 1403

 イラン暦1403年デイ月19日

 

東京に住んでいるとイチョウへの思い入れが深くなる実感がある。この青空の中、黄金色に輝く葉を見れば、それもそうかと思う。雨降りが多い海町の地元では、防風・防砂で植えられている松の木の印象が強く、海風を受ける向きのとおりに樹形が傾く姿は曇天に似合うと思う。

朝、会社に向かう道すがら朝日に照らされるイチョウをよくよく見ると、葉が緑から黄色へとグラデーションになっているのに気がつき、その美しさにはっとさせられた。一枚手にとって写真を撮りたいと思うけれど、紅葉しきる前の葉が地面に落ちているわけもなく、上方へカメラを向けた。

 

 

出かけた先

・ピクニック納め

天気も良く気温も低くなく風もないという好条件の日に、小金井公園までドライブしてピクニック納めをした。途中寄った好きなパン屋でパテサンドとフィナンシェを買う。車だったので遠慮せず大きなブランケットも積み込む。夫は分厚い技術書を持ち込んで読んでいた。トイレ近くに大きなイチョウの木が何本かあり、地面は落ち葉でふかふかの布団のようになっていたが、同時に銀杏も落ちていてなかなかの匂いを放っていた。

江戸東京たてもの園にも寄る。前川國男邸はたびたびSNSに写真が流れてくるけど、実物を見ると新鮮な感動があった。家を建てるならこんな家を建てたいし、すでに建てている人もいるのではと思ったけどどうなのだろうか。他にも邸宅があったけど、農家の日本家屋や金物屋がわたしは特に楽しかった。断熱さえ気にならなければ日本家屋に住みたい憧れがある。

大根が干されている様子/前川國男邸のダイニングの様子が良い
かわいいちゃぶ台

帰りに焼き団子を買ったら、いろいろある表情の中で悲しい顔のものを渡されたし、思っていたより熱々じゃなくわたしも悲しくなった。この日の月は今年いちばんの大きな満月だった。みなさんの街でも見えましたか。



・東京シティ・バレエ団『白鳥の湖〜大いなる愛の讃歌〜』

従妹が仕事で関わっているのもあり観に行ったバレエ鑑賞。事前にあらすじを読み、従妹からも注目ポイントを教えてもらっていたので、バレエ初心者でもとても面白く鑑賞できた。藤田嗣治の背景美術が美しく独特で、踊りの中では各国の民族舞踊のような踊りが続くシーンが印象的だった。

誕生日が近かった従妹へは花を持っていった。家に猫がいると飾る種類にかなり制限があるけど、選ぶ過程も含めて花を愛でるのっていいなと改めて思う。

この日は観劇に合わせて自分比ではパリッとした服装をしてきたつもりで、夫も新しいコートを下ろしたりして、めかし込んでのランチの気分に合う新宿高島屋のビチェリンへ。セージの風味がきいたバターソースのラビオリ。

 

・散歩と本屋の日

人を誘うのにも連絡を取るのにも極度に緊張する自分、相手ひとりひとりには別の思い入れがあったとしても、「連絡を取る」という行為には勇気が必要でつい一度にまとめてやってしまう(気軽に連絡を取れる間柄の人がいないだけとも言える)。えいやっと連絡して返信が来るか恐々としていたら、すべてすぐに返信をもらえてとてもうれしかった。

二人でははじめて出かける友人に、行き先やお店を提案してもらってありがたい気持ちに満たされつつ待ち合わせ場所へ。気になっていた韓国料理屋は、普段の韓国家庭料理的なものを出している。わたしが頼んだビピンパも、留学中に韓国人クラスメイトが作ってくれた優しい味に近くてとても好み。崩れた豆腐のスープ、隠れて見えないわかめの和物、手前の醬のようなもの、こちらはどれも知らない味だけどほっとするような食べ疲れない料理だった。棚に飾られている食関連の本が面白そうで、次回行ったときにはタイトルをメモして帰りたい。

写真撮影のルールの厳しさに慄きつつ撮った緊張の一枚、指が写り込みました

ぽつぽつと会話しながら緑道を散歩し、隣エリアの本屋へ。東京に住んでいても、知らない街や店が数えきれないほどある。

日記本をテーマにした本屋は、想像に反して純粋な日記本以外の書籍も多くあり驚いた。日記本やZINEの存在は知っていたものの、自分自身は他人の日記を読むのことになんとなく後ろめたさがあり触れたことがなく、だけど広く日々のことが綴られている本のジャンルと思うと読みたくなる本もありそうだ。それにしても、ブログは楽しく読めるのに、本になると感じる他人の生活を覗き込む罪悪感は、いったい何が違うのか。読者を意識して書かれているか否かだろうか。

次の本屋では、書棚での並びのルールが分からず最初はちょっと混乱したものの、だんだんなんとなくの括りが分かってきて、特定の本を探し求める以外の偶然の出会いが起きやすいのも良いのかもと思う。書棚を一通り眺めるのに一生懸命になるあまり、友人におすすめの本を聞くのを疎かにしてしまい少し後悔。

 

この日と他の日に買った本と、図書館で借りた本。読むのに半年以上はかかる気がする遅読なわたし。途中に寄った中国茶のお店で選んだ台湾四季春烏龍茶が爽やかな香りでおいしい。まさに今、この月記を書きながら飲んでいる。

 

・動物園で穏やかな日

これも勇気を出して連絡を取った会合。都心から離れた冬の動物園は人が多過ぎず、流れる空気の穏やかさが心地よかった。動物を愛でる合間に、それぞれの近況や悩みを静かに話すことができて良い日だった。

ぴたりとくっつく動物を見ると、わたしと夫だと思う
顔のまだら模様が美しい羊/目が合ってうれしかった山羊

帰る前に良い感じの大衆酒場に寄った。

生のかぶ

 

・夫婦の慰労会

慰労会であり冬至の会でもある毎年冬の恒例レストラン。サービスの方が前回の会話を覚えていてくれたり、見送りしてもらうときにシェフがゆっくりと会話してくれたり、料理以外のホスピタリティも含めて大好きなお店。

ちょうど原木の入れ替わり時期で、新旧どちらからもスライスしてもらえた生ハムの食べ比べ、内臓が苦手なわたしが初めて頼んだ鴨の心臓は全く臭みがなくてパプリカやピーマンとの食べ合わせがおいしい、夫の好物のドフィノワ。

スープを飲み切ると絵柄が現れるイヤープレート、今回は2014年
いちばんおいしいキャラメルアイス/出来立てのカヌレ

ここに来るときに付けると決めている指輪

 

・クリスマスの会

夫と一緒に有休を取り、尾山台のオーボン・ヴュータンでお惣菜を調達。平日だしと油断していたら到着時には長蛇の列。それでも進み具合は早かった。年末の特別だと言うことで遠慮せずたくさん買い込む。買い忘れていたパンは自宅隣駅のパン屋で、飲み物は成城石井のノンワルコールスパークリングをなんとか確保。買い出しだけでへとへとになったけど、盛り付けるだけで華やかになったので万事OKだと思う。ケーキは毎年定番でガトーショコラを焼いている。クリスマスに特別な思い入れはないけれど、二人で家でのんびりと食事をして過ごす時間を決まって作るのは大事かもしれないなと思う。

 


買ったもの

ここ数ヶ月で買っていたもの、買い物納めのもの。こうして振り返ると改めて良いアイテムを選んでいるなと思える。

 

・BODE バスケットボールなカウチンニット

Recreationをテーマにした24AWは、あまりスポーツに思い入れもないしスキップしようかなと思っていたのだけど、実物を目にするとやっぱりどれもかわいくてその中でも夫に強く勧められたこちらを衝動買いしてしまった(衝動とは言え一日悩んで購入を決めました)。ベージュに赤の色味も(リバーシブルでも着れる!)、なんだか肩の力が抜けそうなイラストの具合も気に入っている。

ゴールのネットを編み模様で表現しているのがかわいい


・BODE レースシャツ

BODEと言えばなレースシャツ。昔はレース生地のことをカーテンや下着みたいだと思い好きになれなかったけど、このシャツはボクシーなシルエットがフェミニンさを中和させている気がして好きだと思える。セールにかかるとの情報をいただき、この年の買い物納めとして購入。色んな着方ができそう。

 

・R.Alagan 星座のネックレス

秋頃にオーダーしていたネックレスが完成して到着。ぽってりとしたオリーブシェイプは見た目に反して重みがなく、付けていても肩が凝らない。中を空洞にしているらしい。すごい。自分の星座のマークはイニシャルのMとも似ていて、なんだか思い入れがある。

 

・久しぶりのカレンダー

しばらくカレンダーを買ったり飾ったりしておらず、自作の予定表を冷蔵庫に貼る生活をしていた。@catsanddogsinthewindowのカレンダーのあまりのかわいさにどうしても諦めきれずオランダから通販。

 

読んだもの/聴いたもの

これは改めての自分への慰めおよび戒めなのですが、「触れたものすべてに感想を持ちそれを発信する必要はない」し、「引用したことで何かを言った気になってはいけない」。

 

ダヴィッド・ル・ブルトン『歩き旅の愉しみ ――風景との対話、自己との対話』

表参道のCIBONEで見かけて気になっていた一冊を図書館で借りる。CIBONEの本のセレクトは結構良い気がする。わたしは普段から散歩が好きで、歩いているときに時間や距離が伸びるほど頭の中がすっきりしてくる感覚があり、それに同意してくれるような文章ばかりだった。巡礼路の歩き旅と信仰心との関係や、問題を抱える若者に歩き旅が奨励されサポートされる文化があるらしいと知れたのが面白かった。わたしは街中よりも、あまり何もない、殺伐とした自然の中を歩くのが好みです。

宗教心は消え失せてはいないが、粉々に砕けて、それぞれの主体性に応じて再構築されている。さまざまなジャンルの宗教が入り混じり、いろいろとアレンジされ、広く共有されてきた古い宗教制度に縛られない、手作り感のある親しみやすい信仰形態に変わりつつある。そこには各人の強い感情がともなう。(p.107)

散らばった自分の断片をかき集めるためには回り道も必要で、そうすれば、不安に押しつぶされて生きづらさを感じる重苦しいさまざまな気持ちが整理される。歩き旅は、いわば心のカオスを立て直す手段だ。(p.208)

抜け道を歩くことは、競争や速度の重視、コミュニケーションツールの横暴を背後に追いやって、友情、言葉、連帯の世界を優先することだ。(中略)他人はもはや敵でも見知らぬ人でもなく、互いに近しいと感じる人になる。(p.212)

旅人は道を進む途上で、社会から疎外されているという感情に対する治療薬のようなものを見つける。このように健全な方法で問題から距離を置くことで、以前の反芻思考のせいで目を向けてこなかった答えが思いがけなく示されることも多い。旅が進むにつれて緊張や辛い思いが徐々に弱まっていく。(中略)身体を動かせば、思考も動きはじめ、自分がはまり込んでいる袋小路から抜け出せる。(p.215)

 

・『ケース・オッテン指揮 古き良き時代のイタリア音楽1300~1650』

・『シリーズ:ヨーロッパのリュート音楽第2集 「白い花/イタリア編」』

クリスマスの夜になんとなく良い雰囲気を添えてくれたレコード二枚。確か神保町のレコード社で買ったのだった気がする。リュートのやさしい音が好き。

 

 

その他食べたもの/作ったもの

・ニョッキの代わりにピザとフリット

いよいよ本格的に寒くなってきたしとニョッキが好きなお店へ行くも、ランチではパスタやニョッキは出していないと言われてしまった日。夫が表情から分かるくらい落胆していてかわいそうだけどそれもまたかわいいと思ってしまう。代わりに注文したピザはそれはそれでおいしい。冬のうちにニョッキのリベンジをしに行く。

 

・クリスマスのレフトオーバー

贅沢に買い込んだらもちろん一日で食べ切れるはずもなく、結局三日にわたって楽しく食べた。サラダ類をハムと一緒にピタパンに挟むとおいしい。

 

・あまいもの

いただきものの緑と赤がかわいいフルーツケーキ、初訪問のGATHERで買えたスコーンとさつまいものケーキを半分ずつ。

ブルーボトルのジャンドゥーヤケーキは冬に似合う味。

 

・引き続きやってますのお弁当

曲げわっぱへの憧れと食後すぐに洗える環境がないオフィス、ステンレスは汚れを落としやすいのがいいけど湿気がたまりやすいジレンマ。

 

・ほのぼの夕飯

自炊はこれくらいでいいと思う。卵焼きは夫と半分こ。

 

・神田まつやの年末そば

「東京での年内最後の外食はお蕎麦がいい」とリクエストして。夫はまつやの列に、わたしはきのね堂の列に分担して並ぶ。このお盆が良い味を出していて欲しいのですがどこで買えるのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

家の掃除については、場所ごとに時期や期間を変えて一年を通してのルーティンにしようとしているけど、今年はなかなか捗らず年末にまとめて掃除することになってしまった。へとへとになることが多い週末だったけど、おかげで部屋も冷蔵庫の中身もすっきり気持ちよく帰省へと向かえたので終わりよければというやつです。とはいえ、次の一年はきちんとやるぞという気持ちを込めてリマインダーに各種ルーティンを追加しました。

秋から冬のはじまりにかけてメソメソとして塞ぎ込んでいた気持ちも、冬の東京の快晴でやっと盛り返してきたかもしれない。そのときの自分の気持ちは否定するものじゃないけれど、今後はもう少し別の形で表出したり消化することができればいいなと考えている。今年は、繊細な自分に配慮してほしいという気持ちが強くなり過ぎて良くないなと思っていたので。明るくハッピーな(に見える)中年を目指していきたいと思う今日この頃です。

年末の帰省からは次回の月記で。では、遅ればせながらのBuon Natale。

 

日向ぼっこ鳩見て元気出してね