イラン暦1402年シャフリーヴァル月13日
楽しい出来事が多かったひと月。今は夢から覚めてぼんやりとその夢を思い出しているような気分です。
夏の祝祭
今年もいつものチーズケーキで祝ってもらった。買ったばかりのイタリアのテーブルクロスが、ティーカップたちと良い相性で、夫と一緒に朝から喜んだ。
昼も夜も好きなお店へ連れて行ってくれた。ありがたい。上品で豊かな香りがする温かな中国茶と、二人で分けて食べる冷やし中華。
夜のビストロ、何度か来ているけどはじめてシェフといろいろ話をした。思っていたよりも気さくな方で、料理の話から健康の話までして笑ってしまった。サービスの方も、前回来た時のことを覚えていてくれて、いつものごとくやさしい気持ちになった。
東京国立博物館で「古代メキシコ展」を鑑賞した。厳かな展示品に合わせた薄暗い照明、それ自体に気持ちが落ち着いてしまった。
夫から「どんな年にしたい?」と訊かれて、その時はじめて一年前よりは自分の気持ちが前向きになっていることに気がついた。あとほんの少し、楽しく暮らせたらいいなと思う。
短い帰省
あまりにも夏空な地元の風景。暑い夏はこうやって地方をドライブするくらいがちょうど良い過ごし方なのだなと年々思う。今年は甥っ子たちと海へ入ったり、何年かぶりの町内会の盆踊りへ行ったりもした。
お気に入りのお鮨屋さんで、例によって白身ばかりを食べる。猿海老の握りを食べた後には、その殻を使ったお味噌汁も作ってもらい、あまりの出汁のおいしさに歓喜した。
respiración系列のcomerに初訪問。パエリアの具材は5種類から選べて、わたしたちは石鯛にした。店内はカジュアルな雰囲気だけど、食べ物も飲み物もどれもちゃんとおいしかったのでまた気軽に来たいな。
夫が観光本の中で見かけて行ってみたいとのことだったので、玉泉院丸庭園へ。わたしも初めて来た気がする。十年ほど前に再整備されたとのことで、もちろんすごくきれいだったのだけど、ただ年を経ていない清潔さが良いというのではなく、傾斜のある土地を生かした植栽の配置や、石垣の眺めが本当に良くて、たった一度でお気に入りの場所になった。あと鴨たちがのんびり散歩している姿にも癒された。
両親と一緒に富来までドライブへ。去年夫と二人で行ったてらおか風舎へ招待した。わたしと夫で交代して運転したのだけど、途中両親ともに寝ている時間があって微笑ましかった。道中の海が見事な瑠璃色で、陽を受けてきらきらと光っていた。こういうのが忘れえぬ記憶になるのでしょう。富来は桜貝が有名で、子供の頃に来たときに買ってもらい、その薄いピンク色に胸がときめいた思い出がある。道の駅には、新しく「さくら貝資料館」なるものが出来ていて、そこでは桜貝をはじめとする、近辺で採集された何百種もの貝殻や、採集した研究者の経歴などが展示されていた。写真は和歌に因んだ貝とのこと。宝石のようで見ているだけで楽しかった。
お茶もぬかりなく。21世紀美術館裏のkakurezato coffeeはゆったりとした空間に色鮮やかな小物や古書などがあり、金沢らしいお店だなぁと感じた。吉はしがテイクアウトのかき氷を出していると聞いたので、暑さを覚悟して行ったものの、店内で食べられてラッキーだった。滴水というぷるぷるした和菓子と白玉が入った抹茶のかき氷・滴水氷。かき氷、いつも食べ切れないと思うことが多いけど、これはおいしくてほどよい甘さで食べ切れました。
その他の外出など
・一年に一度の鰻
鰻は年に一度だけ、信頼できるお店で、と決めている。わたしたちが通うのは秋葉原から少し歩いたところにある、明神下 神田川。趣のある古い建物がまず良い。畳の個室で、この時期は風鈴の音が聞こえる。廊下や階段にも小さな酒器や煙管、壺などが飾られているのもささやかながら美しいなと思う。
そのあとは神保町まで移動して、魂のオアシスことティーハウスタカノでお茶をした。
・中野でこぶ牛
前日に適当に「イラン 展示 東京」とかで検索していたら見つけた、イランの形象土器にまつわる展示。ここは初めて来たけど、鑑賞疲れしないほどよい広さのギャラリーで、二階には静かで居心地に良い休憩室があり、大きなソファに腰掛けて眠りそうになってしまった。すべすべしたこぶ牛を前から後ろから鑑賞し愛でさせてもらった。昔は歴史も興味が持てないし、博物館の類も好きじゃなかったのだけど、どうやら最近は「はるかなる時を超えて今目の前に存在する」ということ自体にひどく感動するようになったらしい。他に展示されていたガラスもとてもきれいで、モザイクのようにガラスの切片を並べてから焼成するスタイルがあったと知り感動した。
帰りはLOUに寄った。スイカとカラフルなミニトマトのサラダ、器までかわいい。アメリカ式のフライドチキンもおいしかった。普段は飲酒しないわたしたち、夫がかわいいグラスでオリジナルビールを飲んでいた。たまにはいいですね。
バスを待っている間に狐の嫁入りで雨宿りをしたら、遠くの空に虹が見えていた。
自炊の記録
・スパイスチャイ
チャイ用のミックススパイスをお土産にもらい、最近はチャイを煮出すのが楽しい。イランではストレートの紅茶をチャイと呼ぶので、それと区別するために「スパイスチャイ」などと言っているが、適切な表現があれば教えてください。
・パスタ
ベランダ菜園の伸びきったバジルを使ってジェノベーゼ(キャラメリゼナッツ入り)、ベーコンとキノコのアラビアータ。
・土鍋炊きのとうもろこしごはん
そろそろ季節終わりかな。
・煮豚
・大葉とササミとエリンギの春巻き
・ブルーベリーシナモンマフィン
急に食べたくなって平日の仕事終わりに焼いた。
買ったもの
・BODEのキルトジャケット
お店で見るたびにかわいいねぇと夫と愛でていた一着。寒い季節の到来を前に手に入れました。リバーシブルだし二人で着れば一着で四度楽しめるのでは?という謎理論と、特別なセール案内に後押しされて。花柄の方は、実はLAのお店で試着したけど形が似合わなくて断念したシャツと同じファブリック。この柄が本当に好きなのでうれしい。そしてこんなにキュートなデザインがばっちり似合ってしまう夫に感心する。大事にします。
・B SIDES JEANSのパッチデニム
本当にデニムが好きでして…。ヴィンテージの何年代の、といったいわゆるマニアではないけど、デニムという存在が好き。去年くらいから気になっていたB SIDESのデニム、さらに自分好みのデザインの一本を見つけて購入。
・Kanellのブルトンシャツ
これにデニムにベレー帽、ローファーみたいなベタな格好を秋にしたいなと思う。オフホワイトに薄めのカーキの配色が自分の肌色に合う気がする。
読んだ本
・ジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』
今年もラヒリを。前に読んだ二冊はイタリア語で書かれた作品だったから、英語の方は初めて。だからなのか、文体が少し違うように感じた(もしかしたら訳者の違いも関係するのだろうか)。でも作品から漂う物悲しさは同じだし、ドラマや映画、その他の物語のようなドラマティックな出来事は起きないのに、個々人の人生にはこういったことが起きるよね、それでいて当人にとっては大きな出来事なんだよね、と思わせる話ばかりなのも共通していると思った。翻訳版のタイトルになっている「停電の夜に」と「三度目で最後の大陸」が特に好きだった。後者は理由は分からないけど読後に(電車の中で)泣きそうになってしまった。最近あたらしい作品の翻訳が出たようなので、また本屋へ行こう。その前に他の作品も。
朝晩の暑さがやわらいできたような気がする最近です。日脚の変化に、なんとなく何でも出来るのではないかという出どころ不明の全能感を感じています。暑いと散歩が捗らなくて移動距離も狭まるからかな。涼しくなったらどんどん外へ歩きに行きたい。ではまた。
去年のシャフリーヴァルの過ごし方