Aban 1402

  イラン暦1402年アーバーン月8日

 

窓を少しすかして(窓を「すかす」って方言らしい?)、ふかふかの布団にすっぽり包まれて眠るのが心地よい時期になりました。

枝上の緑の寝床 لانهُ سبز روی شاخه

 

おにぎりを買って公園でピクニック、緑のどんぐりを見つけた日には緑色の服を着ていた

 

 

 

京都旅行

今年はいろいろな事情で海外旅行は諦めようかという話になり、それはそれは気分が下がったものの、前回も楽しかった京都をまた訪ねることに。

出発一週間ほど前から、鷲田清一の『京都の平熱』で予習というか気分を高めていた(前回三分の一くらい読み、今年も同じくらい読んだ)。京都(市内)の好きなところは、街がコンパクトで比較的どこでも歩いて行けちゃうのと、碁盤の目状の街ではどこにいても方角が分かりやすいところ。『京都の平熱』でも中心がある街とない街の話が出ていて(京都は後者)、ほぼどの街にも円形広場であるメイダーンが存在するイランは、中心がある街だなと思ったりした。

 

行きの新幹線、アロマフレスカで買ったミニミニパニーニを食べた

景色的写真はほとんどフィルムカメラで撮ったので、iPhoneでは食べ物の写真が多め。

四条烏丸のNowheremanで焼菓子を買い込む。焼き立てを渡してくれたフィナンシェはお店を出てすぐ食べた。近くに佛光寺という荘厳な見た目のお寺があり、その寺社とバター香るフィナンシェのコントラストが可笑しかった。鴨川縁まで歩いて、川を見ながらさらにピスタチオとラズベリーのタルト。夫と川底にいる鯉の様子を眺めて実況したりした。

 

北上して下鴨神社糺の森、居心地が良くてとても気に入りました。

樹を支える支柱が木で出来ているの、木同士で支え合っているようでなんだか感激する

この辺りは高級住宅街ということもあって一軒一軒が大きくて見惚れた。その中に、こういったなんでもないようでグッとくる光景がある。いいなぁ、この辺に住みたい。

 

もちろん出町ふたばの豆餅も買う。

 

夜は大好きな鳳泉で。卵が得意じゃないわたしでもおいしく食べられる芙蓉蟹。

朝夕の寒暖差に身体がついていけなかったみたいで、ホテルに帰るなりおなかが痛くなって悲しかった。宿の何がいけなかったのか(加湿器の音かも)、夫婦そろって寝つきが悪かった。

 

寝不足でも朝一で気合を入れてイノダコーヒ本店へ。別館の席を選ぶ。夫が好きそうなお店だ。中庭でもない、どこか外からずっと鳥の鳴き声がしていて、その声に二人で笑っちゃったのだけど、帰り際に本館と別館を結ぶ空間に鳥籠があることに気づいた。夫が近寄って見に行くとサイドステップを披露してくれたらしい。かわいい者同士の心の通わせにほっこりする。

 

御所を見学した。前回は、近くのアッサンブラージュ・カキモトでケーキを買って、京都御苑内のベンチでケーキを手掴みで食べたのだけど、それがなかなか楽しい思い出となった。今回は御所の中もしっかりと見て回った。

 

お昼は前回も訪ねた懐石料理。最近流行りの高級だったり珍しい食材を使う料理じゃないけど、そこが好き。丁寧でどれもしみじみとおいしい。(おすすめだけど小さなお店でインターネットには名前を書けないので、リアルな友人には聞かれたら教えます)

どんなにおなかいっぱいでも炊き立てのごはんはおかわりしてしまう

 

午前中はあんなに青空だったのに、お店を出るころには雲が出てきていてバスに乗ると雨が降ってきた。土砂降りのなか、清水三年坂美術館へ。旅の目的のひとつだった小村雪岱展を観てきた。鏡花以外の作家本の装丁も、わずからながら残した日本画もどれも小村雪岱ならではの世界観で見られてよかった。

清水から坂を下って八坂神社へ着くやいないや、雨が大降りになってしまい門の下で半時間ほど雨宿りをしていた。目に見える雷光、霰まじりの風雨、揺れる提灯、体こそ芯まで冷えて辛かったけど、その光景には心が揺れる部分があった。

 

京都へ行くよと連絡をしたら快く都合をつけてくれたid:danseと夜ごはん。こちらが提案したお店が満席で入れず、代替案もなかなか出ずで申し訳なかった…。

インターネットで知り合った人とそんなに気軽に会うわけではないのだけど、ここ数年は巡り合わせに恵まれていて、知り合うひとたちがみんな楽しく良い友人になってくれる。彼の書くブログのファンだったけど、本人の醸し出す雰囲気もとても居心地が良くて楽しい夜だった(人見知り&口下手なわたしたちと、たくさん話してくれてありがとう)。帰りに宿まで散歩したのも良い思い出です。近くに住んでいたらもっと頻繁に遊びたいなとか考えてこの日は眠った。

 

丸太町のひつじで念願の揚げたてドーナツを買い、前回来てお気に入りの店になった下鴨のうどんあおいでまたきつねうどんを食べた。ひつじはかなりの行列(前日も並んだけど時間がなくて断念した)、うどんあおいもひっきりなしにお客さんが訪れて、店員さんがてんやわんやしていた。後者は地元客という感じだったけど、東京でも京都でも同じような状況なんだなぁ。

 

南禅寺龍安寺の二択から龍安寺へ(「南禅寺は若者カップル、龍安寺枯山水」の言葉も受けて)。自分たちも含めて、特に石庭前の縁側は観光客でごった返していた。その後、庭や池周りを歩きながら、夫と「こちらは静かだねぇ、石庭よりよっぽど禅なのでは」みたいな話をした。

 

あとは夫に前回見せられなかったザ・京都駅な部分を見せて、新幹線改札内でいづ重のいなり寿司を買って帰路に着いた。

 

宿は一泊目はお安めの宿、二泊目はエースホテルで、わたしたちがよくやるパターン(グルジアでも半分はカジュアルな宿、もう半分はラグジュアリーな宿にした)。エースホテル、時期のせいなのかかなり高くて、楽天で貯めに貯めたポイントを使って予約した。泊まるのは二回目だったけどあまり館内を散策できていないので、次回こそあそこでもっとゆったり過ごしたいな。

 

 

旅の余韻の朝ごはん、エースホテルのウェルカムスナックのクッキー(チョコとマカデミア半分ずつ)と、ひつじのドーナツ。はあ、またすぐ旅に出たい…。

 

 

食べたもの/作ったもの

・季節の甘いもの

アンジェリーナの和栗モンブラン、仙太郎の栗大福、アラボンヌーの和栗のタルト。

 

・従妹とお出かけ

神保町でミールス&本屋、清澄白河で買い物&お茶、新宿で焼肉。本屋を回って本を選んだり、紅茶の匂いを嗅いだり、何よりとてもいい子と穏やかな時間が過ごせてお姉ちゃんは癒されました。

 

・朝ごはん

東京でいちばんおいしいのではないかと思う、近場のパン屋のクロワッサン。成城石井のホットビスケットは生クリームたっぷりがおいしい。

 

・自炊

地味なごはんがおいしい、夫が作ってくれる焼き鳥丼(隠し味のオイスターソース代わりに今回はいしるで)。

家で作る牛丼は食べられる、ポークソテーにきのこのバルサミコソース。

 

読んだもの/観たもの/聴いたもの

・張愛玲『中国が愛を知ったころ――張愛玲短篇選』

図書館で借りた。写真の「沈香屑 第一炉香」は、生真面目だった少女が恋に身を狂わせる様子や香港特有の暑く湿った気候の描写が印象に残った。登場人物の感情も周辺の植物もなんだか湿っぽい。二作目の「中国が愛を知ったころ」、終盤で一人の男を囲む三人の女たちの様子に、映画『セックスと哲学』を思い出した。本人たちは真剣で、だけど傍観者には滑稽に映る。「同級生」は過去と現在が何度も行き来して時系列がぐちゃぐちゃになる文章が、わたしはとても好きだった(訳者あとがきを読むと、どうやらそういった書き方を好む時期があったようだ)。単に「よく知っていた同級生も変わってしまったのね」みたいな話ではなく、俗っぽい言い方をすると間接的なマウンティング合戦のようなものがあり(それは時代によってどちらが上に立つかが変わる)、あるいはシスターフッドがあり、わたし自身は経験がないものの日本の現代の女子校でも起こりうる感情が透けて見えるのではないか、というようなことを読後考えた。

 

・ジャアファル・パナーヒー『熊は、いない』

今回もパナーヒー的な、何が現実で何が虚構なのか境界線が分からなくなる作品。でもちゃんと演者がいる。写真右に写っている息子パナーヒーの作品とも微妙にリンクする部分がある。

id:danseが書いていた感想がわたしには思い付かないもので面白かったので、みなさんもぜひ読んでみてください。

boldmove.hatenablog.com

 

・BEIRUT "ARTIFACT"

渋谷のタワーレコードで買った。ザックの初期作品などが含まれていて、中にはBeirutっぽくない曲もあったりして、それが面白かった。ある若者が、ある時代に、自室に籠って作った音楽、エモーショナルだ。

 

 

 

冠雪の山のような神々しさ、美しい顔だけど毛をくわえている

昼寝していてふと隣を見たらこうなっていた

 

 

旅の疲れと、旅行中の寝不足が相まって、東京に帰ってきてからもずっと眠い。

一ヶ月ほど前から微妙に体調が悪く、逆流性食道炎が再燃している気配がある。よくない食べ物を避けたり、食事量を減らしたりしているけど、ご存知の通りおいしいものを食べることを楽しみに日々過ごしているので、食に制限がかかると悲しい。「大人になると、食べることでストレスを解消しようとする部分があって(単に大食いだけでなく何を食べたかということを含めて)、そういった意味でお店探しに必死になったりする」というような会話を夫とした(記憶がおぼろげだけど大意はたぶんこう)。

来世は丈夫な体で生まれたいと思っているが、今世もなんとかしたいので、日々自身の不調と向き合っている。選ぶ食べ物、時間の使い方、休日の過ごし方、思考をクリアにすること、丁寧な生活と揶揄されるかもしれないけど、いちばん身近な範囲から善い行いをやっていくべしと思っている。それには身近にいる人を大切にすることも含まれる。

 

みなさんの日々はどうですか。

 

 

去年のアーバーン月も楽しそうだった。

meigukhnm.hatenablog.com