Azar 1402

 イラン暦1402年アーザル月6日

 

ある日の朝、寝ぼけながらわたしの頭の下に腕を滑り込ませた夫の鼻から、小鳥の鳴き声のようなピイという音がかすかにしていた。順番に体調を崩して、しばらくのあいだ別室で寝ていた。ふたたび同じベッドで寝るとなった日は空間の違和感を感じていたけど、こんなささやかで穏やかな瞬間があるのを忘れていたかもしれない。

 

 

出かけた先と食べたもの

・人間ドックとティービーフンと

二回に分けて検査を受けたつらい月だった。内視鏡検査はじめ、こんなにひどい思いをして検査をして、結果何もないのなら、検査を受けること自体がストレスになり良くないのではと思っていた。と言っても何も見つからないわけでもないので定期的に受けましょうね(毎年受けるのはやめようかなぁ)。

一日の中で、朝食を抜くのが一番つらい。だから健診の日は本当にひもじい。朝早くから受診だったので、終わってすぐに小川軒のサロン・ド・テに駆け込んで小さなケーキと紅茶をいただいた。隣のショップも含めて大好きな空間だ。

そのあとは夫と待ち合わせてそのまま同じビルのビーフン東に久しぶりに行った。薄味は最高。わたしは汁派。バーツァンも持ち帰りした。まだ二個冷凍庫にいる。蒸し器には入らない大きさなので電子レンジで少しずつ解凍&温めする。

 

 

・友人とのお出かけ

ちょうどひと世代ずつぐらい離れた三人で久しぶりに集合した。共通項は"あちらの地域"に関心があること。女性同士で集まることを「女子会」と呼ぶのに抵抗がある年齢になったのですが、この二人はこの感覚を分かってくれるのではないだろうか。

この日、三人ともそれぞれ歯の治療へ行くことが分かり、同情しつつ笑ってしまった。TLに流れていく治療報告…。東中野キャラバンサライ・パオに初めて訪問。楽しい空間でおいしいアフガン料理を食べて、二人の話も面白くて楽しかったな。味気ない(が、粉の味はしっかりする)ナンって本当に好き。またどこかの国・地域の料理を囲んで集まりましょうね。

 

次の週は散歩&散策仲間と新木場へ。CASICAと夢の島熱帯植物館が目的地。冬の訪れを告げるような冷え込む日で、CASICAで食べた薬膳ごはんが身体に沁みた。熱帯植物館は予想以上に楽しめた。外に生えている植物とは異なる、熱帯の植物にひとつひとつ感動して眺めては写真を撮った。他に館の沿革を展示しているスペースがあり、そこにかつて使用されていたウォークマンプリントゴッコがあって懐かしかった。プリントゴッコをガシャンとやるとランプがピカーとなるあの瞬間…。次回は年が明けたらわが家に来てもらってお茶会をしたいなと思っている。

たけのこの赤ちゃんとぺっちゃんの舌みたいな葉

 

・ピクニックと散歩

秋を逃すわけにはいかないと夫と小石川植物園へ。ちょうどお祭りみたいなものが開かれている日で、落ち葉かるたなどのイベントがあって楽しそうだった。白山のTENERAでパンを買い込んでスズカケの下を陣取り、シナモンロールやマロンデニッシュをおいしく食べたところで雨が降ってきてしまい、葉が濃い樹の下で雨宿りした。通り雨にしては長く降っていた。止んだところでシートはびしょ濡れになっていたので悲しいが植物園を後にした。あたたかいお茶が冷えた体を多少は救ってくれた。

雨上がりの花型の青空

ルンルンだが雨で退散するところ&このあと発熱した

夫が仕事でひとり休みだったので歩いて植物園へ行った日。このごろ仕事でなんだか虚しい気分になっていたので、こういった静かな時間が必要だった。ベンチに座って本を読んでいる足元は落ち葉でふかふかしていて、そのあいだもずっと頭上から葉が降ってきていた。寒くなってきても花を咲かせている植物もあり、励まされる思いがした。

雲がかわいい一日だった

 

・木の丸みとタルトタタン

夫が美容室に行っている間、一人で表参道・渋谷で時間を潰す日があった。気になっていたギャラリーをいくつか訪問した。そのうちのひとつ、白紙で展示されていたのは小山剛の木工作品。いくつかの種類の木材から掘り出された作品はほとんどが丸みを帯びた形をしていた。手に持つと、さらさらとした質感なのに、一方でその丸みからふわふわした生き物を触っているような柔らかな触り心地を感じて不思議だった。こういった作品を飾ることができる広い家が欲しい…。

そのあとは青山通りをすこし入ったところにひっそりとあるカフェへ。この日は間貸しの別営業だったらしい。タルトタタン、ほんのりした苦味が好みの味だった。ちょっとしたアクシデントでタルトタタンと栗のプディングを半分ずついただくことになって二度おいしく楽しい時間を得た。

 

・旅の土産品とお菓子

普段とちがう特別な食べものが家にあると単調な日々に彩りが加わる。

坂田焼菓子店のクッキーとグラノーラ

本家尾張屋の蕎麦ぼうる。

箱がかわいくて捨てられずにいる

ちりめん山椒の最適解をずっと探し求めているが、これはかなり理想に近かった。京都駅の新幹線改札内のお店で見つけた下鴨茶寮のもの。

これは小川軒のふくろうサブレ。

 

読んだもの

・ナヴァー・エブラーヒーミー『十六の言葉』

本屋でたまたま見つけて手に取った一冊。偶然に良い本と出会えるとうれしい。著者と同じく、イランで生まれて幼くしてドイツに移住した女性が主人公で、十六のペルシア語の単語・フレーズにまつわる記憶を軸に展開していく話。意図したものなのか、サブテーマと呼べそうな事柄がかなりの数あるようにわたしには思われた。メインテーマはイラン人にもドイツ人にもなりきれないアイデンティティなのかな。複数の時間軸が交差しながら描かれるのでちょっと混乱するところもあるけど、イランに滞在している間の描写も多くて、単純な「移民文学」とは呼べないなと感じた。主人公が元ジャーナリストという設定だからなのか原文がそんな感じなのか分からないけど、三十代、四十代の女性の語り手としては訳文が硬い気がした。このへんは好みでしょうか。

作中、ハインリヒ・ベルの「橋の畔で」に触れて、この話がイラン的でペルシア的な人とのつながりが感じられるというくだりがあり読んでみたくなった。こうやって別の文学作品につながっていくのは楽しい。あとは、イラン南東部の街、バムを訪れる場面があり、わたしは治安面から行こうと思ったこと、というかそもそも行くという選択肢があるなどと考えたことがないなと気づいた。バムの城砦もそうだし、その後の道中で寄るケルマーンのシャーズデ庭園も、小説中の描写を読むとすごく惹かれるところがあった。いつかわたしも行けるのだろうか。

だが、そのうち金髪の男たちは、なにかしらイランぽいものを見つける。遠慮がちなところとか、恥じらうところとか、行動や言葉でどうしても真似できないところとか。連中がはじめてわたしの人格の一部として評価する特徴だ。連中は化けの皮をはがしたとでも言わんばかりに勝ち誇る。

 

買ったもの

・YanYan Knits カーディガン

試着した瞬間、「わたし以上に似合う人はいないのでは」みたいな全能感に包まれて買うことにした。丈が短めの服が好きです。背が低いのでバランスよく見える気がするから。

襟についた花も、入れ違い(?)のボタンの掛け方もかわいい

 

・美容の品

いよいよ乾燥の季節到来なので、ビュリーのオイルとRMKのリップバーム。ちいさな美しいものを手に入れると気分が上がりますねぇ。

 

最近のスキンケア備忘録

子供の頃からお絵描きよりも工作が好きだった(だけど絵画教室には通っていた)。二十代の前半までは当たり前の行為と思い化粧に取り組んでいたが、本来は色の付いたもので顔を飾ることにあまり興味がないようだ。あと、元の自分の造形を好きでいたいという気持ちと、その造形を別物に変えることに若干の抵抗を感じる。

前置きが長くなったけど、そんなわけでメイクよりもスキンケアが好きです。

最近使ってるのはこんな感じ。

オイル:Officine Universelle Buly ローズヒップオイル(夜のみ)

化粧水:ETVOS モイスチャライジングローション

ビタミンC:Beautiful Skin Cフォーカスエッセンス(朝のみ)

ヒアルロン酸:CHRISTINA テラスキン

乳液・美容液:ETVOS モイスチャライジングセラム

部分美容液:POLA リンクルショットリンクルセラム(夜のみ)

クリーム:DAM DAM もちもちルミナスクリーム

     DRUNK ELEPHANT プロティニポリペプチドクリーム

肌が弱くて体調が崩れるとアトピーが出るタイプなので、刺激がないことがマスト。次が乾燥を防いでくれるアイテム。成分としてはセラミド、ビタミンC、ヒアルロン酸、ペプチドを選んでいる。レチノール/レチノイドはA反応が出ないと謳われている配合のものでも肌が耐えられなかった。攻めの美容は一生できそうにない。

家でのスキンケアに加えて、先月からいわゆる美容医療に手を出し始めた。普段から通っている皮膚科が美容診療もやっているので、そちらでフォトフェイシャルを二回。フォトって色んな悩みにアプローチ出来るとよく言われていると思うけど、実際は、悩みごとに波長が異なる照射フィルターを変えながら施術するらしい。わたしが通っているクリニックでは顔に二周照射するから二種類のフィルターを選択できるという感じ。なので全部を一気に解決する代物ではない。

最初は小さなシミがある気がしてカウンセリングを受けたのだけど、自分が思うほどシミらしいシミじゃないようだった(ほくろやそばかすくらいの大きさだし、いつからあるかも覚えていない)。シミにアプローチしないのであれば、毛穴とハリにフォーカスしてフォトフェイシャル以外の施術、たとえばピコフラクショナルやマッサージピールがおすすめと言われたので次回はそのどちらかにするつもり。

 

 

このところずっと布団に魅了されているぺっちゃん。床暖房も入れ始めたけど、この冬は寝室とリビング、どちらで過ごす時間が多くなるでしょうか。

玉座だね

 

 

来月イタリアから友人が来日する。特別待遇で出迎えるつもりだ。熱烈歓迎。次にこのブログを更新するころ、雪は降り始めているだろうか。あたたかい室内から冬空を眺める時間を大事にしましょうね。ではまた。

 

 

去年のアーザル月はアメリカ記だった。

meigukhnm.hatenablog.com